2021年8月22日(日)に令和3年度 第53回社労士試験が予定通り実施されました。
僭越ではありますが、試験経験5回の出不精ママが試験の肌感・解答分析・難易度・問題の解き方などを書きたいと思います。今回は、労働基準法・安全衛生法の選択式です。
下記の通り、 労働基準法・安全衛生法の選択式全体と各5問について7つの難易度に分けました。
激易 | 易 | やや易 | 普通 | やや難 | 難 | 激難 |
結論から先に言うと、労働基準法・安全衛生法の選択式の難易度はやや難。けっこう微妙な問題が多かったと思います。なんとか3点は取れるかな?というレベルだと感じました。
労働基準法の選択式 A 内容は違約金
賠償予定の禁止を定める労働基準法第 16 条における「違約金」とは、労働契約に基づく労働義務を労働者が履行しない場合に労働者本人若しくは親権者又はA の義務として課せられるものをいう。
⑤2親等内の親族 ⑥6親等内の血族 ⑯配偶者 ⑱身元保証人
正解は ⑱身元保証人でした。
「あらかじめ賠償予定額や違約金を予定する契約をしてはならない」というのが労基法16条の主旨ですが、その違約金の定義を聞いてくるとは・・・しょっぱな緊張している時に、ちょっと戸惑う問題ですね。
各スクールのテキストには載っているものの、「身元保証人」は決して重要キーワードではないので、きちんとテキストを通読している人でないと確信を持って埋められなかったかもしれません。民法をよく知っている人なら、瞬殺かな?
ただし確信が持てなくても、会社に損害を与えた場合に連帯して損害賠償を負うのはだれ?新規に社員を採用した時に保証人になるのはだれ?とイメージできれば、素直に「身元保証人」を選べたのでは?
「労働者の定義」の章で「同居の親族=6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」が頭にあったら混同してしまって、 「⑤2親等内の親族 ⑥6親等内の血族 ⑯配偶者 」のどれかを選んでしまった人もいたかなぁ?
したがって、この問題は普通に近いけどやや難とします!
労働基準法の選択式 B 内容は判例
「使用者が労働者に対して労働基準法 37 条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、割増賃金として支払われた金額が、B に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、B に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である[…(略)…]。
⑦家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金 ⑪通常の労働時間の賃金 ⑬当該歩合給 ⑰平均賃金にその期間の総労働時間を乗じた金額
正解は ⑪通常の労働時間の賃金でした。
国際自動車事件(令和2年3月30日)からの出題。この判例自体は有名で、見たことがある人が多かったのではないか?
また、「割増賃金の基礎となる賃金は、通常の労働時間又は労働日の賃金である。」という定義は、基本中の基本。
したがって、この問題は易とします!
労働基準法の選択式 C Bに続いて内容は判例
そして、使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであり[…(略)…]、その判断に際しては、当該手当の名称や算定方法だけでなく、[…(略)…]同条の趣旨を踏まえ、C 等にも留意して検討しなければならないというべきである。
⑫当該手当に関する労働者への情報提供又は説明の内容 ⑭当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け ⑮同種の手当に関する我が国社会における一般的状況 ⑳労働者に対する不利益の程度
正解は⑭当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付けでした。
もし覚えていなくても、「特定の手当」が割増賃金であると判別できるためには何が必要か?と考えて国語力で解くと、⑭当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付けがもっともしっくりする。
消去法で考えても、
⑫当該手当に関する労働者への情報提供又は説明の内容 ⇒ 割増賃金であると判別できるという主旨とはちょっとずれている 。また、「 情報提供又は説明の内容 」がその後の 「等にも留意して検討しなければならない 」という文章とは文脈が合わない。
⑮同種の手当に関する我が国社会における一般的状況 ⇒ いきなり広義すぎる。
⑳労働者に対する不利益の程度 ⇒ 割増賃金であると判別できるという主旨とはちょっとずれている。
という解き方はどうでしょうか?
他の選択肢を見てもあまり迷わないので、この問題は普通とします!
安全衛生法の選択式 D 内容は中高年齢者等への配慮
使用者は、中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たって特に配慮を必要とする者については、これらの者のD に応じて適正な配置を行うように努めなければならない。
⑧希望する仕事 ⑨就業経験 ⑩心身の条件 ⑲労働時間
正解は⑩心身の条件でした。
各スクールのテキストには載っているものの、「 心身の条件」は決して重要キーワードではないので、きちんとテキストを通読している人でないと確信を持って埋められなかったかもしれません。 選択式の問題集を何周も解いていた人ならできたかもしれない。
なんとなく読み飛ばしてしまってうろ覚えだった場合、 「中高年齢者 」というヒントに注目すると、
「中高年齢者」だから、あんまり長時間働けないから 「⑲労働時間」かな?それとも仕事の経験年数は長いから「 ⑨就業経験 」に応じて配置しろってことかな?
といった具合に他の選択肢も選んでしまいそう。
したがって、この問題はやや難とします!
安全衛生法の選択式 E 高所での作業とは何メートル ?
事業者は、高さがE 以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行う場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
①1メートル ②1.5メートル ③ 2メートル ④ 3メートル
正解は③2メートルでした。
この「2メートル」、スクールによっては、テキストに載っていないのでは・・・?しかもストレートに数字を覚えてないと解けないし!
ただし、平成27年度の択一式問8Aで同じような問題が出題されています。繰り返し過去問を解いていた人は、この2メートルを覚えていたかもしれません。
激難としたいところだけど、過去問で出題されていたことと、墜落する高さを常識的に考えれば ③2メートルまたは④3メートルの二択にしぼれるかもしれないので、難とします!
まとめ
A | B | C | D | E | 全体 |
やや難 | 易 | 普通 | やや難 | 難 | やや難 |
・全体としては、やや難。決して油断できない。3点なんとか取れるだろうか?といったレベル!
・作戦としては、BとCで2点取りたい。そして残り3問中1問は正解し、3点を死守したいところ!
以上の内容は出不精ママの個人的な感想であり、解き方や合格を確約するものではありませんので、ご了解ください。